不妊症とは

不妊・不育症相談イメージ

不妊とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定の期間(一般的には1年間)妊娠しないものと日本産科婦人科学会では定義されています。不妊のカップルは10組に1組と言われていますが、男女とも加齢により妊娠が成立しにくくなることが知られており、現代社会では不妊カップルの割合はもっと多くなっている印象です。妊娠に向けて不安のある方はまず産婦人科にご相談ください。
不妊症は女性だけに原因があるわけではなく、男性側の原因や両者に原因がある場合、あるいははっきり原因がわからない場合もあります。

女性不妊の主な原因
  • 排卵因子:卵巣の中で卵胞が育ってから排卵するまでの過程に問題がある。
  • 卵管因子:卵管の通りが悪く、卵子と精子が出合えない。
  • 子宮因子:子宮が奇形であったり、子宮筋腫を患っていたり、子宮の発育が不全であったりすることから、受精卵が着床できない。
  • 年齢:40歳を超えると、卵の老化のため、妊娠率が著しく低下する。
男性不妊の主な原因
  • 性交渉のときにED(勃起障害)などのために腟内に射精ができない。
  • 精子をつくるはたらきに問題があり、精液中の精子数が少ないか(乏精子症)、まったくみられない。または動いている精子の割合(運動率)が少ない(精子無力症)。
  • 精子を運ぶ通路の通りが悪く(精路閉鎖)、精子が出てこられない。
原因が不明な場合
  • 男女ともに様々な検査を受けても、これといった不妊原因がみつからないこともあります。原因不明の不妊ということになります。
    治療を始めたばかりの頃の検査では原因が不明でも、治療を進めていくうち、次第に原因が明らかになることも少なくありません。

主な不妊検査

不妊症の治療を行うにあたっては、まず妊娠の妨げになっているのが何かを調べる必要があるので検査を行います。検査は女性であれば月経周期に合わせて行い、不妊症の原因が推定できれば、それに対応して治療方針を立てることが可能です。

女性

問診
  • 月経の状況や過去の妊娠・出産、既往歴(過去の病歴)、日頃の生活習慣などについてご質問いたします。
内診・経腟超音波検査
  • 子宮や卵巣を診察します。押して痛い箇所の有無、超音波で子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫などの病変が無いかの確認などを行います。また、卵胞の発育具合や排卵推定などにも超音波検査は有用です。
子宮卵管造影検査(現在当院では行っていません)
  • 月経開始後6~10日目に行います。X線透視で子宮の形を見たり、卵管の通過性を調べます。卵管が詰まっていると精子と卵子が出会えないため不妊症の原因となり、体外受精へステップアップをお勧めします。
血液検査
  • 血液を採血して、ホルモン検査や糖尿病などの全身疾患に関する検査を行います。
ヒューナーテスト
  • 排卵日の深夜または早朝に性行為を行い、翌日の朝一番で受診していただきます。性交後に腟に射精された精子の数と動きを調べます。検査では、頸管粘液中に運動している精子がいるかどうかを確認し、子宮内に十分な精子が侵入しているかどうかを推測します。粘液中に精子が確認できなければ無精子症や抗精子抗体、子宮頸管炎などが疑われることもあります。
AMH検査(抗ミュラー管ホルモン検査)
  • 卵巣の予備能を調べる検査です。

男性

問診
  • 不妊症の原因となるものが無いかを、日頃の生活習慣や既往歴(過去の病歴)などを通して確認します。
精液検査
  • 男性不妊症の診断・治療において最も基本的な検査で、精液の量や濃度、運動率、精子形態などを調べます。

主な不妊治療法

タイミング法

基礎体温表や超音波検査で排卵日を予測し、排卵日前後に性生活を持つことで妊娠を目指す治療法です。不妊検査で目立った原因が無い場合にタイミング法が行われます。

排卵誘発法

卵巣を刺激し、排卵を起こさせる方法で、内服薬と注射があります。排卵誘発法は、排卵障害がある場合だけでなく、原因不明の不妊などに対しても有効なことがあります。
通常は排卵の無い患者様に排卵を起こさせるために使用しますが、人工授精の妊娠率を上げるために、また体外受精などの生殖補助医療の際にも利用されることがあります。

人工授精

洗浄した精子を子宮の中に送り込む治療法が人工授精です。タイミング法との相違点は、精子が腟に入るか、子宮に入るかというところです。精子が女性の体内に進入するプロセスは通常の性行為とは異なりますが、その後の受精と着床については自然な経過で妊娠が成立することを期待します。
人工授精は、不妊検査で精子の数が少ない、精子の運動率が低いなど、精子に問題があると認められた場合、頸管粘液が少ないなど女性側に問題がある場合、さらにヒューナーテストで、精子が子宮に入っていない懸念がある場合などに用いられます。

体外受精

排卵誘発剤を用いて排卵の準備をさせ、排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出します。そして、あらかじめ採取しておいた精子と接触させます。受精を確認することができたら、その受精卵を子宮内に戻します。このように一度体外に卵を取り出し、受精させることから体外受精と呼ばれています。

顕微授精

精子の運動能力が低かったり、重度の精子減少症などの場合に用いられます。治療方法は、通常の体外受精と採卵までは同じです。その後、採取した卵を顕微鏡で確認し、顕微授精が可能かどうかを判断します。可能な場合に顕微授精を行います。
顕微授精はいくつか手法がありますが、卵細胞質内精子注入法(ICSI)が一般的です。こちらは、顕微鏡下で、注入用の針(インジェクションピペット)に1匹の精子を尾部の方から吸引して、卵子の細胞質内に刺し、卵子の中に直接、精子を注入する方法です。

人工受精や体外受精が必要な場合、専門施設へご紹介させていただきます。

不育症とは

不育症は、妊娠はするものの流産や死産を繰り返している状態を言います。2回流産した場合を反復流産、3回続いた場合を習慣流産といいますが、一般的には2回連続した流産・死産があれば「不育症」と診断され、原因を探します。

自然流産は一定の割合で起こる(1回の妊娠当たり約10~15%)とされ、日本では妊娠を経験した女性の40%近くの方が流産を経験しているともいわれています。そのうちの約4%が不育症と考えられると厚生労働省の調査で報告されています。

不育症の原因

妊娠初期に流産する原因の多くは赤ちゃん側、つまり受精卵の偶発的な異常と考えられています。受精卵自体が原因の流産を治療したり、予防するというのは困難です。しかし、なかには流産をくり返す他の原因を持っている可能性もあり、経腟超音波検査、血液検査などで調べて見ることも必要です。

不育症のリスク因子として、抗リン脂質抗体症候群、夫婦染色体異常、子宮奇形、ホルモンの異常などが知られていますが、原因不明な場合もあります。リスク因子が判明しても100%流産や死産に至るわけではありません。また、原因がわからなくても次の妊娠で出産することも少なくありません。不育症でお悩みの方は、一度ご相談ください。

この不育症には大きく分けて3通りの治療法(内分泌代謝異常の治療、子宮形態異常の治療、血液凝固異常の治療)があり、個々の異常に応じた治療法を選択します。ただし、流産や死産の原因が、染色体異常による偶発的な場合や、明確に特定できない場合には、特別な治療はせずに、カウンセリングのみが行われます。